今年の全日本パラサイクリング選手権・個人TTが開催されたのは、栃木県、群馬県、埼玉県にまたがる渡良瀬遊水地。今大会で使用したコースは大半が栃木県栃木市に属するものの、途中では群馬県邑楽郡を通過。アップダウンは皆無で、ブレーキングを必要とするのは僅かに2か所という、パワーがものをいう1周7.3kmを舞台に、梶選手が出場したMC5クラスは4周=29.2kmで争われました。
パラサイクリングのクラスは、主に障がいの種類と使用する自転車によってC(二輪自転車)、T(三輪自転車)、H(ハンドサイクル)、B(タンデム)の4つに分けられます。さらに、各クラス内で障がいの程度によって1~5の5段階(数字が若いほど重度)に分類されます。梶選手が走る「MC5」は、二輪自転車を使用できる、障がいの程度が軽度な男子選手(先頭のMは男子の意)たちによって争われるクラスで、世界では健常者のプロや強豪アマに匹敵するパフォーマンスを発揮する選手も少なくありません。
梶選手はパラトライアスロンに代わって、今季よりパラサイクリングのワールドカップへの参戦を開始し、この5月にはベルギーとイタリアでそれぞれ開催された2大会に参戦。選手活動の拠点を置くオランダから一時帰国し、優勝を絶対目標に4年ぶりに全日本パラサイクリング選手権・個人TTへと臨みました。
真夏の暑さが会場を包む昼前、11時45分にパラサイクリングのレースはスタート。3番手出走の梶選手は、Trinity Advanced Proと共に勢いよくコースへと飛び出すと、1分間隔で先にスタートしたMC5クラスの前走者2名を早々にパスし、2周目へと入ります。10分06秒→10分14秒→10分17秒→10分09秒と1周あたりのタイム差を11秒以内に抑える安定したペーシングでレースを進め、昨年優勝の亀田琉斗選手(日本大学)を寄せ付けず、トップタイムをマーク。1分14秒の差をつけて、4年ぶり2度目の優勝を果たしました。
【梶選手のコメント:勝つことが出来て、ほっとしている】
「シクロクロスなどテクニカルなオフロード系種目を得意としているので、一定ペースで淡々と踏み続ける必要がある単調なコースレイアウトは自分向きではなく、昨年優勝でパワーもある亀田選手が強いだろうなと予想していました。レース中はサイクルコンピューターを見てスピードを落とさないようにしながら、どこで踏めるかを考えながら走りました。
先にスタートした2名の選手を1周目で追い抜いたことで、前に目標物がなくなり、後ろから追ってくる亀田選手にとって有利な状況でしたが、今日は家族にコースサイドからタイム差を教えてもらえたおかげで、集中して走ることができました。かなりハードなレースでしたが、せっかくオランダから帰ってきたので、負けられないという気持ちがあり、バイクと身体の両方でしっかりと準備出来たつもりだったので、勝つことが出来て、ほっとしています。
残念ながら今年はもう開催が無いのですが、来年のワールドカップでは全日本チャンピオンジャージを着てレースを走ることが出来ます。個人的に1つステップアップすることが出来たと感じています。
今大会から新たに投入したRivet Mipsの涼しさにも助けられました。視界も広く、鼻の周りがカットされているので呼吸もしやすいです。また、今日は風がなかったので、CADEX Aero Wheelsystemのフロントバトンとリアディスクの組み合わせで気持ちよく走ることが出来ました」
Photo : Giant Japan